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って、映画。
観られたこと、あります?
おもむろに、そのモノを冷蔵庫から取り出されたYさん。
その手には、銀色のアルミの袋が握られています。
「これね、フランスの『なんとかトリュフ』っていうチョコレートみたいなんです。」
その「なんとかトリュフ」はいいんですが、ひとつ気になることがあります。
その袋、すでに封があいてるんです。
で、空いた口をクルクルと折り返して巻いているわけです。
この状況は、名探偵コナンでなくとも、それを観ているお子さんにでも分かります。
そんな探さなければ出てこない冷蔵庫の奥から出てきた食べさしのチョコレート。
昨日、今日に開封されたものでないことは明らかです。
しかも、もともとは、もうひとつ大口の袋に入れられていたようです。
賞味期限を確認しようにも、その袋自体には、製品表示がありません。
しかし、この「バイオ・クライシス(生物兵器等による危機的状況)・レベル3」を回避する選択肢は、
哀しいかな、今の私には用意されていないのです。
「はい、先生。おひとつ、どうぞ。」
・・・まず、「私」なんですね?
そう思いながらも、おもむろに、一粒、口に運びます。
まるで、理科の実験結果を確かめる小学生のように、
Yさんの好奇心たっぷりの眼差しが、私の口元に突き刺さります。
「どーお?おいしいでしょ?」
「はあ・・・そうですね。」
正直に言いましょう。
それは、「おいしい」とか「甘い」とかいう以前の問題です。
「固い」んです。
どれだけ冷蔵庫で放置・・・いえ、熟成されていたんでしょう。
日にちが経ったキャラメルかと思うくらい歯に響きます。
「前、食べた時は、ほろ苦い上品な味だったんですけど。」
その「前」がいつなのか?
のど元まで言葉がこみ上げてきます。
噛まずにしばらく舐めていると、徐々に口のなかで溶けて出してきます。
確かに、ほろ苦い味ですね。
しかし、これが元々そういう味なのか?
それとも、時間的経過のもとに化学変化を起こした結果なのか?
それを知る術はありません。
「先生、もうひとつ、どうですか?」
「あっ、いえ、もう私は結構ですから。他にも、十分頂きましたので。」
私の細やかな抵抗です。
「そぅおー?どれ、どれ。」
そう言って、Yさんも試食テストのように、慎重に一粒、口に運ばれます。
「うわ、かたっ!」
ねっ、固いでしょ(笑)
私がニヤッと油断した瞬間、それはやってきました。
みなさん、受け身の用意はいいですか?
3連荘(れんちゃん)で来ますよ。
一発目。
直後にYさんの口から、衝撃の一言が発せられます。
「やっぱりちょっと古かったみたいね。」
「・・・。」
確信犯だったんですね。
しかも、「ちょっと」じゃないでしょ。
二発目。
さらに驚くべき行動が。
「プッ・・・やっぱりかたいわ。」
そう言って、手のひらに吐き出されたではありませんか!
しかも、私が胃袋におさめた後で。
そのまま、哀れ「なんとかトリュフ」は、放物線を描いて、キッチンのゴミ箱へ。
三発目。
「バイオ・クライシス・レベル4」が発動。
なんとそのアルミの袋を丸めて冷蔵庫に戻されるではありませんか。
えーーー!!!
それ、戻してどうするんですか!?
まさかYさんが食べるわけじゃないでしょ?
今、吐き出されたくらいですから。
まさか95歳のお母さんに食べさせるわけでもなし。
う~ん、これはこわい。
これは、こわいですよ~。
察するに、タバコ屋さんであるYさん宅には、いろんな業者さんが出入りします。
タバコを補充しにくるお兄ちゃん。
同じくジュースを補充しにくるお兄ちゃん。
そして、いつも出前を持ってくる定食屋のお兄ちゃん。
私だけじゃないんです。
これまで、何度も目撃しています。
そのお兄ちゃんたちも「あれ食べ、これ飲み」攻撃・・・いえ、ご厚意を賜っておられました。
しかも、彼らは、月に2、3度お邪魔する私とは、来訪頻度が違います。
この「被害の拡散」という、もっとも憂慮すべき事態。
しかし、私には、彼らに「遺憾の意」を表わす以外に手段がないのです。
・・・変な連帯感が芽生えてしまいそうです。
帰りの車中。
Yさん宅の冷蔵庫のように、カオスと化した私の胃袋。
サラダ巻きの後に「なんとかトリュフ」は、効果的な波状攻撃でしたね。
「もう少し待ってね。帰ったら、すぐに足三里(胃のツボ)に鍼をうってあげるから。」
そう、優しく胃に語りかけます。
しかし、胃の細胞の「私」に対する信頼感は、まるで麻生内閣の支持率のように急降下するのでした。
リーマン・ブラザーズの破綻に口火を切った世界的金融危機。
今、ここにバイオ・クライシスへと飛び火して、燎原(りょうげん)の火の如く、燃え広がっていきます。
その危機は、今、あなたにも迫る・・・かもしれませんよ(笑)
では、今宵はこのあたりで。
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