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はい、盛大に開催されました。
ノドまで酸っぱいものがこみ上げて来そうな切迫した状況。
山盛りのヤキメシを前に、私が出したファイナルアンサーとは?
「では、Yさん、ヤキメシをひと口だけ頂いていいですか?」
「やっぱりお腹いっぱいですか?」
「ええ、ただ、どんなお味か、頂いてみたいものですから。」
「そうですか。」
「で、もしよろしかったら、タッパーをお貸し頂けませんか?」
「持って帰られるんですか?」
「はい、明日、温めて頂きたいと思いまして。」
「あら、そうしてくれます?」
「ええ、せっかく作って頂いた本格的なヤキメシですから、じっくり堪能させて頂きたいと思います。」
そして、胃に詫びながら、ひと口だけヤキメシを頂きます。
Yさんの口調から、特にハムに想いが込められておられるようでした。
「いやあ、さすがに、美味しいですね。」
「そうですか、嬉しいわ。」
「特に、このハムが違いますね。」
「でしょ。そのハムはね・・・(後略)」
これで、無事、丸くおさまりました。
「はい、先生、お茶が入りましたよ。」
「ありがとうございます。いやあ、もうお腹いっぱいですよ。」
「だから、言ったでしょ。ちょっと大変かもよって。」
「はあ、満喫させて頂きました(笑)」
ここで、今回の幕がひかれるはずでした。
水戸黄門で言えば、午後8時45分頃の展開です。
うっかり八兵衛が小ネタで笑いをとって、次回の旅路へとつながる時間帯です。
みなさんも、そう思われましたね?
しかし、今回のドラマ、春の2時間スペシャルだったんです。
濃いめの玄米茶を頂きながら、ひと息ついていたその時。
Yさんの頭上右斜め上45度に電球が光ります。
「あらっ、忘れてたわ。」
一瞬、背筋に悪寒が走ります。
何かは分かりません。
しかし、「虫の知らせ」が、盛んに警告音を発しています。
できたら、そのまま、忘れて頂けないでしょうか。
治療を受けて軽くなられた足取りで、Yさんは冷蔵庫へ向かわれます。
まるで天岩戸から出てきたかのように、その一品は神々(こうごう)しくパックに横たわっていました。
「これは・・・おはぎですか?」
「そう、このおはぎは絶品なんですよ。」
どうやら、以前、登場した同じタバコ屋さんのOさんから頂いたそうです。
どこかの老舗の匠の一品。
ほのかな甘さで、上品で奥深い味わい。
すでに、Yさんは、夕方までに2個食べられたそうです。
「さあさ、デザートは別腹って言うでしょ。」
あのー、この場合、おはぎは、やはりデザートに分類されるべきものなのでしょうか?
もちろん、分かりますよ。
主食でもなく、おかずでもありません。
でも、米じゃないですか。
そう、もち米でしょ?
えっ、米・・・ハッ!
そう、米ですよ、米。
押し寿司→カレー→焼肉定食→ヤキメシ→おはぎ。
何とも国際的・・・いえ、無国籍なラインナップ。
まさに「混沌(カオス)」です。
しかも、お茶まで玄米茶。
米、米、米っ!
一貫して米じゃないですかっ!
う~ん、やられましたね。
東野圭吾も顔負けの見事なプロット(構成、筋立て)です。
お米の消費量が年々減少をたどる昨今。
農林水産省から秋の叙勲に推薦されるかもしれません。
やはりYさんは、只者ではありません。
しかし、このタイミングでのおはぎは、かなり厳しいものがあります。
「あのー、Yさん。私とYさんで、半分ずつ頂きませんか?」
「あら、まだ、もう1パック、あるんですよ。」
「・・・。」
しかし、ここは私が許しても、胃が許してくれません。
なだめて、すかして、何とかYさんと半分ずつ頂くことに成功しました。
・・・終わった。
そう、こうして、胃にも、私にも濃密な一日が幕を閉じたのです。
まるで、「あしたのジョー」の最終回のように、運転席で固まってしまった私。
すぐに、ハンドルを握ることができません。
リクライニングを倒して、休息をとります。
みぞおちに手をあてて、「気」を送り続ける私。
フロントガラス越しの視線の先。
夜空に煌々(こうこう)と輝く春の月を眺めながら・・・。
-完-
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