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盛者必衰の理(ことわり)をあらわす。
行ってまいりました。
もちろん、Yさん宅です。
Yさんでピンと来られない方は、こちらをどうぞ。
(Yさん伝説:1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,)
「こんにちは、谷田です。」
「あっ、先生。ちょっと待ってくださいね。」
その日は、お友達のOさんが油を売り・・・いえ、懇親を深めに来られていました。
「ほら、先生が来られたから、続きは、また今度ね。」
「はいはい、ほな帰るわね。」
「あー、忘れるとこあった。これ、持って帰ってよ、これ。」
「いや、それ、家で漬けはったん?」
「そうそう、いとこから、ええ茄子もらったから、早速ね・・・(後略)」
「あら、ほんま。そりゃ、おいしそうやわ。」
「でしょ?で、この漬け方がまたポイントでね・・・(後略)」
「そうかいなあ。そりゃ、ええこと聞いたわ。」
「あっ、でも、これを忘れたらあかんで・・・(後略)」
すでに、私の存在は、Yさんの視界からは消えています(笑)
ここから長いのが、Yさんの真骨頂。
仕方がないので、店内で待たせてもらいました。
先日、Yたばこ店の商品ラインナップについて、ご紹介しましたね。
その日もバイヤーのような厳しい視線で、店内をチェックします。
「こっ、これは!」
なんと変わっているではありませんかっ!
主力商品であったかっぱえびせんの陳列スペースが縮小されています。
10袋は並んでいたかっぱえびせん。
己が権勢を誇示するかのように、店内で燦然と輝きを放っていた彼。
しかし、今は、2袋しかありません。
まるで、壇ノ浦で戦に敗れた平家のように。
あまりにも無残な凋落(ちょうらく)ぶり。
しかも、増えているのです。
ビスコの陳列スペースが!
「一体どういうことだ・・・ビスコの下剋上ではないのか?」
う~ん、理解しがたい。
そもそも、かっぱえびせんもビスコも売れているとは思えません。
Yさん宅にお邪魔するようになって、かれこれ2年。
でも、目にしたことがないのです。
たばこ以外の商品をお客さんが買うのを。
その証拠に、レジ横のサインベン。
以前から一本も欠けることなく、規律が保たれています。
「そう簡単に売られてなるものか。」
凛としたその雄姿から、確固たる意志が伝わってきます。
なのに、なぜ、主力商品が変わっているのだろう?
かっぱえびせんとビスコの間に何が起こったのか?
もしや、カルビーとグリコの代理戦争が展開されているとでもいうのだろうか?
MBAを持っている大学の先輩にでも相談してみるか・・・。
「あら、先生。早くあがってくださいよ。」
遠い世界に旅立っていた私の意識。
まるでイタコのように、Yさんがこちらの世界に呼び戻してくれました。
「あっ、すいません。では、失礼します。」
居間に足を踏み入れた瞬間。
私の疑問に共鳴するかのように、思わぬ光景が目に飛び込んで来たのです。
「な、なぜ、こんなところに・・・。」
Yさんが帳簿などをつけておられる作業机。
その上に開封状態のビスコが鎮座しているではありませんか。
しかも、机の上には、ポロポロとビスコの粉が広がっています。
まるで、わが王国の領土を見せつけるかのように。
状況証拠から判断して、これは、Yさんの食べさしでは?
すると、今回のお家騒動の発端。
それは、単にビスコがYさんのお口にあったから?
カルビーは、企業努力を怠ったために、主力商品の地位を追いやられてしまったのか。
かたや江崎グリコにとっては、宮内庁から御用達(ごようたし)をもらうより栄誉なことではないか。
しかし、江崎グリコよ。
ゆめゆめ驕(おご)れること勿(なか)れ。
いつ主役の座を他社に奪われてもおかしくないのだ。
この世は、まさに栄枯盛衰。
生々流転(せいせいるてん)の道理をYさんは、暗に示唆されているのではないだろうか。
一見、売り物をおやつがわりにしているようにしか見えないYさん。
しかし、その瞳の奥には、真理を諭す輝きを秘めておられるに違いありません。
「はい、Yさん。終わりました。」
いつもどおり、Yさん→お母さんと施術を終えます。
「ご苦労さまです。ささ、ご飯の用意が出来てますよ。」
もうすでに何十年もともに暮らす家族の夕餉のようです。
いつもながら、そのお心遣いはありがたいかぎりです。
「今日はねえ、メインに豚しゃぶを用意しておいたんですよ。」
食卓には、よく冷えた豚しゃぶが、たっぷりの野菜とともに皿に盛られています。
しかし、どう見ても3人前ぐらいはあるんです。
「誰が食べるんだろうなあ。」
思わずそんな弱音を吐いてしまいたくなります。
答えは、すでに分かっていても・・・。
「あらっ、ごまだれのドレッシングが出てないわね。」
Yさんの鋭い視線が、私に向けられます。
「先生、ちょっと冷蔵庫開けてもらえます?」
ちょうど冷蔵庫のすぐ横に座っていた私。
伏魔殿の封印を解く心境で、取っ手を握ります。
「さすが・・・いつもどおり、満杯だ。」
万里の長城、ナイアガラの滝、そして、Yさん宅の冷蔵庫。
見る者に感嘆の声をあげさせずにいられない圧倒的なボリューム。
テキトーに詰め込んだとしか思えない混沌たる世界。
熊野古道に続いて世界遺産に登録してほしいところです。
「えーと、ドレッシングはと・・・。」
遊園地で迷子を探すように視線をめぐらせます。
ドレッシングは、普通、ドアの内側ですね。
そこは、Yさん宅でも同じです。
「えーと、ごまだれは、どれかな・・・?」
しかし、多いんです。
なにせドレッシングだけで10本近くあります。
とても95歳のお母さんと二人暮らしとは思えません。
・・・と、その時です。
私が捜索に気をとられていたその瞬間。
「あっ、危ないっ!」
思わず体毛が逆立つような危機が私を襲ったのです。
果たして、冷蔵庫に潜んでいた魔物の正体とは・・・。
-つづく。
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