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かくして、Yさん帝国の電撃作戦は、快進撃を続けるのです。
行ってまいりました。
Yさん宅です。
Yさんでピンと来られない方は、こちらをどうぞ。
(Yさん伝説:1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24)
「さあ、先生、召し上がってくださいよ。」
いつもながらに、いつもの光景。
このセリフだけで、それまでの説明を一切省略できるのも、伝説シリーズの特徴です。
「いつもありがとうございます。では、頂きます。」
「今日はね、ちらし寿司を作ってみたんですよ。」
海老、錦糸卵、紅ショウガ、さやえんどう、しいたけなどなど。
まさに、具だくさんの一品。
で、ちょっと意外だったというか、安心したというか。
いつもなら、最低でも2.5人前以上は、盛られているはずなんです。
しかし、そのちらし寿司は、どう見ても、1.5人前。
ああ、とうとうYさんも気づいて頂いたのか。
金魚にエサをやり過ぎても、死んでしまいます。
菊に水をやり過ぎても、腐ってしまいます。
そして、私にご飯を与え過ぎても・・・。
これまでの数ある伝説の1ページが、まぶたの裏によみがえります。
私がそんな余韻にひたっているのも束の間。
前途に暗雲漂うYさんのお言葉。
「先生、このちらし寿司ね、ちょっと普通と違うのよ。」
「えっ、何か特別な調理法でも?」
「食べたら分かるから、食べたら・・・フフフ。」
Yさんが「普通じゃない」とおっしゃってるわけです。
これがどれだけ危険な兆候か。
伝説フリークの方なら、もうお分かりのことでしょう。
しかし、このこともお分かりですね。
私には、「食べる」ことしか選択肢が残されていないことも・・・。
「・・・では、頂きます。」
しかし、お腹が減っていることも事実。
いやしさとせつなさと心細さとを胸に、目の前の皿へと箸を伸ばします。
「こ、これはっ!」
最近、このセリフを物まねされる方がいて、困っています。
いちおう、著作権は私に帰属しますので(笑)
私の動きが一瞬止まります。
そのリアクションを満足げに確認した後。
Yさんの口から、やはり想定外の発言が飛び出します。
「ねっ、お酢が足らないでしょ?」
っていうか、分かってたら、足してくださいよ。
これが、また、絶妙な配分です。
まさに、普通のご飯と酢飯の中間。
お酢が効いているような、効いていないような微妙なさじ加減。
「・・・ちょっと足らないかもしれませんね。」
「でしょ。途中でお酢を切らしちゃったの。」
なるほど、お酢が足らなかったのですね。
それは、理解できました。
しかし、それを私に食べさせてから確認するという段取りは、理解できません。
そう、その時、私は理解してなかったのです。
まだ、混沌の世界の入口へと、足を踏み入れたに過ぎなかったことを。
「無理に食べないでくださいね。」
「いえいえ、具もたくさんありますから。」
やはり私のためにご用意頂いた手作りの一品。
できるだけ、具と一緒にご飯を口に運びます。
「いやあ、この海老も美味しいですよ。」
私が、半分くらい箸を進めた頃。
そのタイミングを見計らったように、Yさんの次の一手が繰り出されます。
「だからね、用意しておいたんです。」
「えっ?」
これも危険ですね。
満を持して、待ち構えておられました。
まるで、草むらに身を隠すハンターのように。
私は、罠の真上を通り過ぎるウサギだったのです。
「はい、コレ、○○の巻き寿司。」
〇〇とは、近鉄百貨店の地下に入っているお寿司屋さん。
「・・・。」
「ちゃんとしたお寿司も食べて頂かないとね。」
またもや、言葉に詰まる私。
いえ、そのお気持ちはありがたいんですよ。
しかし、ちらし寿司の後に、巻き寿司っていうのは・・・。
「そうそう、これも一緒に買って来ちゃったんですよ。」
「えっ・・・。」
そう、これこそ、混沌の世界なのです。
私の目が釘付けになったその一品。
同じく〇〇のいなり寿司。
「ここのおいなりさんは、絶品なのよ。」
「・・・はあ。」
「あの店に行ったら、これを買わないわけにはいかないでしょ?」
それ、私に同意を求めていらっしゃるのですか?
いえ、もちろん、分かっています。
それが、「同意」ではなく、「恫喝」に近いことさえも・・・。
このちらし→巻き→いなりというお寿司づくし。
まだ、にぎりがあれば、ある程度は、お箸も進むでしょう。
しかし、このご飯もの3点セットは、手強い。
まるで、ベルリン→ビザンチウム→バクダッドと、ドイツの3B政策のような強力な連携プレー。
Yさん帝国主義は、着実に私の領土を植民地化していくのです。
この場合、味が単調にならないよう、「三角食べ」を実践するしかありません。
そう、できるだけ、ちらしと巻きの間に、いなりをはさんで、味にアクセントをつけるのです。
もちろん、巻き寿司についていたガリは、大事なパートナー。
最後まで、消費量に気をつけながら、合間に口に放り込みます。
「先生、お寿司ばっかりじゃ、つらいでしょ?」
分かっていたら、手加減して頂けませんか。
「だから、救いの手を差し延べてあげるわね。」
これも危険な発言です。
一歩間違えると、とどめの一手になりかねません。
「ジャジャジャーン♪」
出ました。
Yさんの体内アドレナリン放出量が、一定以上に達すると鳴らされる自家製ファンファーレ。
これは、黒魔術の儀式で、生贄が差し出された時にも自動的に適用されます。
「はい、コレ。」
「こ、これは!?」
その時、目の前に差し出された一品。
実は、お土産にもらってきちゃいました。
コレです。
見るからに危険な色をしていますね。
Yさんのテンションも一気にあがります。
まるで、赤い布に興奮するスペインの闘牛のように。
果たして、この一品の正体は?
そして、それは、平和的に有効活用されるのか?
-つづく-
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