http://blog.actosmember.com/trackback.php?id=1662
※記事と直接関係のない内容のトラックバックはお断りする場合があります。ご了承ください。
はい、一夜のうちに消え失せてました。
「こんばんは、谷田でーす。」
「あら、先生。いらっしゃい。」
「お願いしましたとおり、今日は、二人でお邪魔しました。」
「はいはい、もう用意ができてますよ。さあ、あがって、あがって。」
その日のYさんは、いつもより、さらにオシャレ。
髪をセットされ、定番のシャネルの香水もほのかに・・・。
う~ん、まさに準備万端。
これは、しっかり照喜名先生をご賞味してもらわなければいけませんね(笑)
「では、お邪魔しまーす。」
台所に足を踏み入れた瞬間。
「こっ、これは!」
思わず目を疑う光景が飛び込んで来たのです。
「食卓が片付いている・・・。」
そう、いつもなら、食卓の半分は、埋まっています。
ビンやタッパーが、アンコールワットのように何層にも積み重ねられているのです。
しかし、今宵はその遺跡が姿を消しているのです。
これは、一体、どういうことなのでしょうか?
通常、食卓では、Yさんと私が向かい合って席をとります。
Yさんは、流し台やガスコンロがあるホスト側。
私は、対面に座らせてもらいます。
そこから、食べる順番や食べ方などの指示が飛んでくるのです。
しかし、それで敷地はいっぱい。
普段は、定員2名の食卓なのです。
で、解体された遺跡は、どこへ行ったのか?
食卓の横にいらっしゃいました。
以前から、保存用食材などのビンが収納されていたキャビネット。
まさに、テトリスのように、びっちりと詰め込まれていました。
ビンの上にビン。
そのまた上にビン。
まさしく匠の技。
同じ規格のビンが揃っているからこそ、可能なわけです。
「Yさん、食卓が片付いてしまってますよ・・・。」
「そうよお、今日のために2時間もかかって片づけたんだから。」
「いやあ、ほんとにありがとうございます。」
「おかげで、どこに何があるか、分からなくなっちゃって。」
なるほど、一見、片付いて機能的になったように見えます。
しかし、Yさんにとっては、アンコールワットのほうが機能的であったわけです。
混沌としているように見えて、どこに何があるか、ちゃんとインプットされていたのです。
それが、下手に配置を動かしたものだから、毎回、探し直さなければなりません。
つまり、そこまでの犠牲を払って、歓待して頂いたわけです。
こちらとしても、そのご厚意には、お応えしなければならないでしょう。
その瞬間、照喜名先生には、血尿が出るまで食べて頂かなければならなくなりました。
とりあえず、椅子の配置や、配膳など、さっさと準備を済ませてしまいます。
ここで、照喜名先生。
<照>
僕もその準備の輪に入ろうとすると・・・
「いいから照喜名先生はそこに座っててください♪」
ポツーン。
<谷>
だって、そこは、混沌の世界。
何がどこにあるか分からない人が、勝手に手を触れてはいけないのです。
混沌としているように見えて、Yさんの頭の中では、しっかりと秩序が保たれているのですから。
また、どこにどんなトラップが仕掛けられているか、私にだって分かりません。
落ち着かない素振りで、キョロキョロと魔殿の中を見回していた照喜名先生。
まるで、こども会の遠足で伊賀忍者村を訪れたかのように。
<照>
そうか、今日は谷田先生も「あっち側」・・・「Yさん側」の人間なんだ・・・。
覚悟はしていましたが、やっと自分の置かれている立ち位置を、現実的に把握した瞬間でした。
<谷>
ああ、今になって、気付かれましたか。
当然のことながら、私は忠実なるYさんの僕(しもべ)です。
「ロデム」と呼んでください。
「さあ、用意ができましたよ。座ってください。」
すると、照喜名先生が恐る恐るYさんに口を開かれます。
「あのー、先にマッサージをさせて頂いたほうがよろしくないですか?」
「ああ、いいの、いいの。先に、しっかり食べてもらわないと。」
その日、食事に招かれたお礼として、Yさんにマッサージをさせてもらう予定だったんです。
もちろん、照喜名先生が。
で、通常、マッサージなどは、食事の前にするのが一般的です。
やはり食後は、胃に血液が集中していますからね。
っていうか、消化という仕事をしている胃に血液を集中させておかないといけません。
マッサージをすると、その部分にも血液が集まってしまいます。
つまり、胃以外の部分に血液を分散させてしまうと、消化不良になりかねません。
お風呂も同じ理由で、食事の直後は避けた方がいいですね。
しかし、それも時と場合によりますね。
そういう医学的な理由以上に、Yさんの心理的な理由のほうが優先順位は高いのです。
世界遺産を解体してまで、食卓を整理して頂いたのです。
しかも、普段よりさらに手間暇かけて調理して頂いたはずです。
現時点でのYさんの関心は、どう美味しく食べてもらうかにしかないはずです。
よくカラダとココロは、ひとつだと言います。
「気」が向いていないと、治療効果も出ないのです。
だから、今、マッサージしても、気もそぞろなYさんに満足してもらうことはできません。
照喜名先生、Yさんの体調のことを心配して頂いて、ありがとうございます。
でもね。
ほんとに心配したほうがいいのは、ご自身のことだと思いますよ(笑)
「さあさあ、まずは座ってください。」
「それじゃあ、照喜名先生。こちらにどうぞ。」
私は、素早く計算します。
魔力が高まっているYさんの直撃弾を回避するには?
それは、いつでもトイレに逃げられる通路側の席を確保しておくこと。
冷蔵庫との間に挟まれた身動きの取れない処刑席・・・いえ、指定席。
そこは、当然、ゲストのために用意されたプレミアムシートなのです。
私は、NBA顔負けのゾーンディフェンスで、常にきついプレスをかけておかなければなりません。
これで、黒ミサの準備は整いました。
愛情に満ちた手料理に飢えている悲劇の主人公、照喜名先生。
いよいよその飢えを満たすべく使命感に燃えたYさんの咆哮が、大阪の夜を切り裂くのです。
油断すると、弾除け・・・いえ、照喜名先生を貫通して私まで被弾してしまいそうな勢い。
さあ、気になるその料理とは?
そして、照喜名先生は、成仏できるのか?
-つづく-
コメント
コメントを書く