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しかし、アメリカの軍事衛星でも見付けられないでしょう。
行ってまいりました。
Yさん宅です。
「Yさん」でピンと来られない方は、こちらをどうぞ。
(Yさん伝説:1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45)
「やっぱり朝青龍は強いわねえ。」
「ええ、ほんとですね。」
ベッドで施術を受けながら、横を向いてテレビを観るYさん。
Yさんは、大の相撲ファン。
というのも、以前、喫茶&軽食のお店をされていた時。
実は、お相撲さんのたまり場だったんです。
大阪場所の開催中。
関取たちは、Yさん宅へ立ち寄っては、手料理に舌鼓を打っておられたのだとか。
今でも当時のお話をよくされますよ、Yさん。
「へえー、そうなんですか。」
それは、それで、いいんですけどね。
なかなか聴けないお話しですから。
でもね。
Yさんの頭には、インプットされているんです。
はい、しっかりと。
当時の関取たちの食べっぷりが。
だから、「一人前」のはずが、決して、一人前に収まることはありません。
で、私の箸の進み具合が鈍くなるとね。
よく言われるんです。
「あら、先生、若いのに。」
「はあ」
「関取の子らは、炊飯ジャー、空にして帰っていったものよ。」
「・・・。」
って、比べる相手が違うでしょ(笑)
たどってみると、そんな歴史があったわけです。
まあ、余談ですけどね。
「ほんと強いですよねえ、朝青龍。」
「そう、白鵬もよ。」
「ですねえ。」
「でも、日本人力士にもっと頑張ってもらわないと。」
「ああ、それは、私も思いますねえ。」
NHKの大相撲中継を観ながら、相撲談議に花が咲きます。
ちなみに、Yさん宅では、一日中、NHK。
たまに、若者向けの番組で、絶対、Yさんは観ないだろうなあっていうのがあっても。
ええ、動かしませんよ、チャンネルは。
NHK。
まさに、魔界の国営放送。
「はい、Yさん。今から足に鍼を刺しますからね。」
「・・・はい、頑張ります。」
Yさんはね。
実は、鍼が苦手なんです。
鍼って、痛いって思いますよね?
でも、痛いことは、ほとんどないんですよ。
多少チクッとすることもありますけどね。
ほとんど刺されたことが分からないくらいですよ。
でもね。
響くんです。
「鍼の響き」ってやつです。
その経絡に邪気がたまっているとね。
ズーンとひびきます。
「痛い」とはちょっと違うんですよねえ。
まさに、「響く」んです。
これは、口では言えませんね。
一度、体験して頂かないと。
これが、苦手な人と快感な人がいるんです。
Yさんは、苦手な人。
確実に響くんです。
それも結構、強めに。
だって、食べ過ぎで、胃経に必ず邪気がたまってますからね。
でも、鍼を刺すと、楽になるのが分かっておられますからね。
大人しくされるんです。
ええ、この時ばかりは(笑)
「ウー・・・アー・・・ウウッ・・・」
地の底から響いてくるようなうめき声。
まるで、注射を打たれる小学生のよう。
ほんとピュアですよ(笑)
さて、鍼を刺して、少し置いておきます。
これを「置鍼(ちしん)」といいます。
また、刺してすぐに抜くこともあるんです。
これを「単刺(たんし)」といいます。
Yさんには、10分ほど置鍼しておきます。
さすがに、置鍼中は、大人しく天井を見つめていらっしゃいます。
と、その時、Yさんが。
「先生、ちょっとテレビの音、下げてもらえますか。」
「あっ、はいはい。」
なるほど、ちょうど相撲も終わりましたしね。
さて、テレビのリモコンはと・・・。
当然、頭の中にインプットされてますよ。
いつも頼まれますからね。
足の不自由なYさん。
言われる前に、心中を察して動くのがサービスマンの妙。
忠実な執事なのです、私は。
「セバスチャン」と呼んでください(笑)
テレビのリモコンは、書棚の腰の高さに置いてあるカゴの中。
ほら、よく小物とか容れておくカゴがあるでしょ?
例えば、こんなかんじの。
ええ、これのもうちょっと大きめかな。
そこに、縦に突っ込んでおられるんです。
で、その黒のリモコン。
いつもなら、すぐに分かるんです。
カゴから、頭を出してますからね。
しかし、今日は、カゴ自体が見当たりません。
おや、カゴがない。
とにかく、まず、リモコンを探さんとね。
えー、リモコン、リモコン、テレビのリモコンっと。
あれ、見当たらんなあ。
これは、エアコンのリモコンだし。
これは、お店のシャッターのリモコン。
これは、照明のリモコンやよなあ。
「あのー、Yさん。」
「はい?」
「テレビのリモコン、どこかに移動されました?」
「いーえ。」
「もしかすると、お母さんかな。」
「いえ、お母さんは、リモコン、使えませんから。」
「すると、Yさん以外は触らないんですよね?」
「そうですよ。」
「いつもは、書棚のカゴに入れられてますよね?」
「ええ、ありませんか?」
「いや、そもそも、カゴがね・・・。」
そう言いながら、書棚に歩み寄る私。
いつもながら、あらゆるモノが山積みにされています。
で、いつものカゴの位置。
しかし、そこには、あるのは・・・。
おや、これは、何だろ?
手に取って、確かめる私。
その物体を凝視します。
ほんの2、3秒だったでしょうか。
私には、もっと長い時間に感じられました。
というより、思考を停止させられたのです。
視覚では、すでにとらえていたはず。
しかし、脳がそれを認知できない。
過去の伝説でもありましたね。(「間接キス!?)」
そんなものが、そこにあるはずがないという先入観。
それが、大幅に判断を遅らせてしまうのです。
はっ!
こ、これは・・・。
久しぶりに出ました黒魔術の禁断の術。
「呼吸麻痺」
しかも、呼吸だけでなく、脳の活動まで停止させてしまいます。
みなさん。
何か分かりますか?
まさに、「箸立てにいわし」級の衝撃でした。
ただ、これは、再現写真をご用意することができません。
もし、撮影シーンを再び、母に見付かってしまったら・・・。
確実に、わが家は、家庭崩壊です。
実はね。
あったんです。
テレビのリモコン。
ええ、ちゃんとカゴに入って。
ただ、そのカゴにね。
あるモノが、突っ込まれていたんです。
でもね。
入らないんです。
大きさからして。
どう考えても。
それでもね。
突っ込まれていたんです。
ええ、かなり無理やりに。
で、入りきらないから、外にはみ出ますよね?
そのおかげで、カゴそのものを覆い隠してしまったんです。
だから、リモコンどころか、カゴさえ、視界に入らなかったんです。
はい。
ご用意はいいですか?
しっかり呼吸を整えておいてください。
その小物入れのカゴに突っ込まれていた一品とは・・・。
「ブラジャー」
大丈夫ですか?
もう一度、言いますよ。
「Yさんのブラジャー」
Eか、Fか、Gか、分かりませんが、Yさんのモノに間違いありません。
だって、お母さんは、ノーブラですから。
その肌色のブラジャー。
フロントホックの位置で半分に折りたたまれて、カゴに突っ込まれているんです。
器量だけでなく、バストも豊かなYさん。
そのカップの部分が、カゴを覆い隠していたのです。
な、なぜ、こんなものが・・・。
しっかり握りしめているじゃないか、私は・・・。
ここは、書棚ではないのか?
その証拠に、ペンや印鑑などの事務用品があるじゃないか。
こ、これが、混沌の世界の真実だと・・・。
う~む。
もしや、治療前にシャワーを浴びられる時に置かれたのだろうか?
それにしても・・・。
「先生、ありました?」
Yさんのひと言で、私の魂が連れ戻されました。
「あっ、はい、ありましたよ。」
「えっ、どこに?」
「ああ・・・やっぱりいつものところでした。すいません。」
「でしょ。動かしてないんだから、私は。」
「はい、じゃあ、音量を下げておきますね・・・これくらいで?」
「はい、それくらいで結構ですよ。」
で、そこで私は直面するわけです。
そう、このブラジャーをどうするか?
う~む、しかし、下手に動かすのも・・・。
増してや、靴下を入れているカゴに入れるのもねえ(笑)
やはり他の服の下に隠しておくべきか?
しかし、ブラジャーを握りしめて、ウロウロしているところを目撃されても・・・。
いや、そもそも、Yさんがここに突っ込んでるのを覚えてられるかも・・・。
はっ!
もしや、わざと!?
私は、試されているのか?
あらかじめ、リモコンをブラジャーで隠しておいて、私にリモコンを・・・。
ああ、それは怖い。
それだけは、想像するだけでも怖い。
それでは、ほんとに「魔性の女」ではないか。
いや、道を踏み外してはいけない。
黒魔術の「魔女」と「魔性の女」は、似て非なるもの。
ふぅー、危ない、危ない。
う~む、仕方あるまい。
ここは、とりあえず・・・現状維持ってことで。
はい、戻しておきました。
元通りに。
ええ、突っ込んでおきましたよ。
入りませんけど。
治療は無事に終わりました。
で、いつもどおり、お食事も頂きました。
はい、お腹いっぱいです。
でもね。
今回は、食事どころじゃなかったんです。
「あのブラジャーは、一体・・・。」
気になって、気になって。
頭から離れないんです。
本来、消化のために胃に集まるべき血液。
しかし、その時は、脳に集まっていたことでしょう。
つまり、消化不良へ一直線。
結局ね。
Yさんは、最後まで気付かれませんでした。
っていうか、気付いておられたけど、気にされてなかったのか?
それがまた、私の妄想を一層かき立てるではありませんか。
う~む、あらためて、恐るべし、黒魔術。
もし、あなたが通販で、
「リモコンも、ブラジャーも、すっきり収納小物入れ。」
なるものを目にすることがあったなら・・・。
マヤ文明の予言を待つこともなく、
この世は、終末の世界へと導かれていることだろう。
・・・合掌。
-完-
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