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ええ、遠回りしてませんか?
「はあー、今日も無事に来られました。」
Oさんは、80代の女性。
強度の肩こりで来院されています。
というのも、「老々介護」のせいなんです。
Oさんは、ご主人と二人暮らし。
すぐご近所に娘さん夫婦がお住まいです。
と言っても、基本は、「お二人」ですね。
ご主人は、7年前、脳梗塞で倒れられました。
何とか一命は取り留められたものの、半身不随の障害が残りました。
要介護の車椅子生活です。
食事、排泄、全ての日常動作は、ご自分でできません。
Oさんが、かいがいしくお世話をされています。
日々の日課として、Oさんは、ご主人の車椅子を押して、散歩に出られます。
そりゃ、ずっと寝たきりでは、心もふさいでしまいますからね。
でも、ベッドから起こしたり、寝かしたりという動作。
小柄なOさんが、70kgはあるご主人を介助するのは、とても大変。
特に、抱きかかえる右腕が、しびれて力が入らなくなってしまいました。
で、娘さんのご紹介で来院された次第です。
一度、施術を受けて頂いたところ、肩だけでなく、全身が軽くなられたとのこと。
健康管理の意味から、毎週、水曜日に通って頂けることになりました。
というのも、水曜日は、ご主人がデイ・サービスに出かけられる日。
ご主人がお出かけされないと、Oさんも来院できません。
でもね。
「すいません。今日は、お休みさせてください。」
って、Oさんから、時々、お電話が入るんです。
というのも、ご主人の機嫌次第なんです。
デイ・サービスからお迎えの車。
朝10時に来られます。
しかし、ご主人の当日の機嫌が悪いと、
「今日は、行かん!断ってくれ。」
と、Oさんにキャンセルの電話を入れさせるんです。
で、そのまま、私のところにもキャンセルの電話が入るわけですね。
「ほんと主人の機嫌次第なんです。困ったもので・・・。」
Oさんの口から出てくるのは、愚痴ばかり。
いかに、ご主人の世話が大変か。
私が、どれだけ、苦労しているのか。
眉間にシワを寄せながら。
ため息をつかれながら。
ところがね。
先月くらいから、キャンセルが入らなくなりました。
順調に毎週、来院されるんです。
「へえー、最近は、ご主人の機嫌もよろしいんですね?」
「そうなんです。ほんとに助かってるんですよ。」
なるほど、それは結構なことで。
介護に精を出されているOさんへのご褒美ですものね。
で、最近は、肩の調子も楽なようです。
Oさん自身、買い物や散歩にもよく出かけられるようになったとのこと。
食欲も湧いてきて、便秘も治られたとか。
で、何よりも違うのが、言葉。
愚痴を言われなくなって来たんです。
ご主人のことよりも、最近は、ご自分のことが話題に。
「先週、何年ぶりかで百貨店に出かけて来たんです。」
「ほったらかしにしていた家庭菜園にも足を運ぶようになりました。」
「結婚した孫の新居に初めて行ってきました。」
う~ん、これは、嬉しい。
施術者冥利に尽きますね。
当然、表情も明るくなって来られましたよ。
でね。
これだけだったら、よくある「いい話」。
しかし、これには、裏がありました。
最近、Oさんの娘さんが来院されたんです。
「おかげさまで、母の体調も良くなったみたいで。」
「ええ、嬉しいですよね。最近は、毎週、ちゃんと来て頂いてますよ。」
「はい、私も助かっています。」
「すると、お父さんのご機嫌がよろしいんですか?」
「まあ、確かに、父も変わりましたけどね。」
「と言うと?」
「実は、母が変わったから、父も変わったんです。」
ここ、大事ですね。
実は、ご主人の機嫌が悪かったのは、Oさんが愚痴ばかりこぼしているから。
娘さんが、おっしゃってました。
ご主人もね。
もどかしいんです。
ほんの些細なことさえ、ご自分でできないですからね。
「お~い、おしっこしたいんや。」
「えっ?さっき、したとこじゃないですか。」
で、さも迷惑そうな顔をされるとね、
ご主人も分かっていても、火がついてしまうんです。
「うるさいっ!、したいものはしたいんや!」
で、Oさんの愚痴が一層激しくなるわけです。
「主人は、ほんとわがままで困ったものです。」
ご主人もね。
内心、申し訳ないなあと思っておられるんです。
ただ、Oさんに面倒くさそうにされるとね。
そんなご自分が、情けなくて、やりきれなくて、こらえきれなくて・・・。
で、どなってしまうんですね。
まさに、負のスパイラルですね。
「実は、先月からホームヘルパーさんに来てもらっているんです。」
お二人の様子を見かねた娘さんが、担当のケアマネージャーさんに相談されたそうです。
その結果、Oさんの家事の負担を少しでも楽にしてあげましょうってことで。
週に2回、ヘルパーさんにお掃除をやってもらうことになりました。
ほんとは、それまでにも、ヘルパーさんに来てもらうことは、懸案事項だったみたいです。
しかし、Oさんが、
「他人に家の中を触られるのは、イヤ!」
ってことで、実現しなかったのだとか。
ただ、Oさんの体調が悪くなるに従い、ご自分で掃除をするのがつらくなってきたんです。
で、試しに一度だけってことで。
ところが、そのヘルパーさん。
清掃業者並みにきっちりピカピカにしてくれるんです。
で、しかも、Oさんの話をちゃんと聴いてくれます。
「Oさんは、ご主人のお世話をほんと献身的にされてますね。」
って、褒めてくれるんです。
これも、娘さんから頼まれたみたいなんです。
ケアマネさんにヘルパーさんを頼む時。
「お掃除が上手な方より、母の話をしっかり聴いて、褒めてやってくれる方をお願いします。」
いや、さすがですねえ。
しっかり話を聴いてくれるものだから、Oさんもヘルパーさんに対して、信頼が生まれます。
だから、家の中を触られても、不快感がなくなります。
おまけに、プロ並みに隅々までピカピカにしてくれる。
家事の負担も減って、身体も楽。
話を聴いて、褒めてくれるから、心も楽。
つまり、Oさんの心に「ゆとり」が生まれてくるわけです。
すると、ご主人への風当たりも変わってきますね。
「いいですよ。おしっこがしたくなったら、いつでも言ってくれたら。」
「もし、おしっこを漏らしても、何度でもシーツを変えますからね。気にしないで。」
「食べたくなかったら、残したらいいですよ。ご近所にお配りするから。」
こう言われて、ご主人が変わらないわけはありません。
当然、どなられることもなくなりました。
結果、デイ・サービスをキャンセルすることもなくなったわけです。
で、ご主人。
Oさんの体調が良くなられたことをほんとに喜んでおられたようです。
ほんとは、すごく感謝してますものね。
ご主人がわがままだと嘆いていたOさん。
しかし、いくら嘆いたところで、ご主人は変わりません。
余計に、わがままの度合いを増すばかり。
この場合、娘さんの機転と優しさによって、Oさんご自身が変わられました。
すると、何もしなくても、ご主人が変わられたわけです。
これは、過去記事でもご紹介しましたね。(「光線、出してますか?」)
ご主人は、Oさんの口から出る言葉にも反応します。
でも、それ以前に、Oさんの「気」に感応しているんです。
「手間がかかるなあ。」
「面倒くさいなあ。」
「ちょっとは、私のことも考えてよ。」
って、心で思っていると、そんな「気」が出ているんですね。
つまり、意識エネルギー。
「波動」って言ってもいいですね。
言葉を交わす以前に、Oさんの「イライラ光線」をご主人は受信しています。
で、ご主人も共鳴して、イライラしちゃいます。
だから、その後、Oさんがどんな言葉を発しようと、噛みついてしまわれるんです。
当然、逆も然(しか)りですね。
相手が自分の思うどおりにならないという時。
その前に、振り返ってみるといいかもしれませんね。
ご自分が、その相手に、どんな「光線」を出しているか?
いくら言葉を選んでも、うまくいかないのは、そのせいかもしれませんよ。
相手を思いどおりに変えるのは、かなり難しいこと。
結局、自分が変わるほうが近道なんですよね。
それにしても、お見事でしたね。
娘さんとケアマネさんとの連携プレー。
私も大いに学ばせてもらいました。
ってことで、今宵はこのあたりで。
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