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ショッピングサイト【アクトスモール(ACTOS Mall)】

2009年12月06日 00:01

あなたは、なれますか?

選ばれた人だけが踏み入れられるその世界の住人に。


「先生、お待たせしました。」

「あっ、もうよろしいんですか?」


どうやら、ドライヤーで髪を乾かし終えられた模様。

しかし、ここは、一刻も早く疑問を払拭しなければ、治療に専念することはできません。


「あのー、Yさん。」

「はい?」

「いきなりこんなこと、訊くのもなんですけど。」

「何ですか?」

「クーラーケースの上に、いつも近鉄百貨店のカゴを積んでおられましたよね?」

「ああ、あれ?」

「ええ、あれです。」


そう、あのカゴは、なぜ、忽然と姿を消したのですか?


次の瞬間。

Yさんの口から、驚愕の事実が語られたのです。


「あれはね、盗られちゃったんです。」

「えっ、盗られたんですか!?」


こ、これは、一体、どういうことだ。

盗られた・・・つまり、盗難に遭ったということなのか?


この場合、この表現は必ずしも適切ではないかもしれません。

元々、Yさんが近鉄から「無断で借りてきた」ものですから(笑)


しかし、あんなものを盗ってどうするのだろう?

しかも、Yたばこ店から。

欲しいのなら、どこかのスーパーから「無断で借りて」くればいいではないか。


つまり、Yたばこ店にカゴがあることを知っている人物の仕業?

それでは、顔見知りの犯行だというのだろうか?


なるほど。

初めて来店した人物が、衝動的に犯行に及んだとは考えにくい。

しかも、黙って接客することなどあり得ないYさんの目前で。


では、一体、誰が?


う~む、これでは、一層、謎が深まるばかりではないか。



「で、誰に盗られたんですか?」


ドキドキと高鳴る私の鼓動。

ついに、Yさんの口から犯人の名前が明らかにされたのです。


「それがね、コカコーラのお兄ちゃんなんです。」

「えっ、あのジュースを補充しに来るお兄ちゃんですか!?」


そう、彼が犯人だというのだ。

しかも、Yさんの見ている前で、白昼堂々と犯行に及んだらしい。


「ジュースって、よく新商品が出るでしょ?」

「ええ、そうですよね。」

「すると、自販機の中身を新商品に入れ替えたりするんです。」

「なるほど。」

「そしたら、元々、自販機におさまってたジュースを取り出さなきゃいけないでしょ?」

「はあ、そうなりますよね。」

「その入れ替え作業の時にね、あのカゴがちょうどいいみたいなのよ。」


そ、そんなことだったのか・・・。

いや、これは、想像もできませんでした。

きっと読者のみなさんもこう思われたでしょう。

「そんなの、分かるわけないだろ!」


「で、よほど気に入ったみたいでね。」

「はあ」

「そのまま、車に積んで持って帰っちゃったんです。」

「・・・。」



なんということだ。

それが、真実だったというのか。


まるで、サタンに魂を吸い取られたかのように、空疎な虚無感が私を包み込みます。

例え、土俵際に強い朝青龍でも、この「うっちゃり」から、逃れることはできないだろう。

かくも恐ろしきかな、禁断の黒魔術。


しかし、これはこれで、良かったのかもしれません。

Yさんに拉致された近鉄百貨店の買い物カゴ。


故郷を離れ、混沌の世界で過ごす寂寥の日々。

いつ帰られるかも分からない暗澹たる未来。

まるで、大宰府で使役に就く防人(さきもり)のように。


しかし、ここでまた、時機を得て、立派に、コカコーラのお兄ちゃんの役に立っているのではないか。

それは、カゴの生き方として、本望ではないだろうか。

そう、神様は、決して見放してはおられなかったのだ。



そんな空想の世界にひたっていたのも束の間。

Yさんの次の言葉が、私を現実へと連れ戻したのです。


「まあ、あげてもいいんですけどね。」

「はあ」

「どうせなら、そっちのカゴを持って帰って欲しかったんです。」

「えっ!?」


と、Yさんが指差すのは、前述のスーパーRの買い物カゴ。

Yさん宅から最も近いそのスーパー。

買い物カゴの色も、近鉄と同じグレー。


所詮、買い物カゴですから、見た目は同じ。

ただ、店のロゴが違うだけ。

もちろん、機能的には、全く同じはず。


「何か違うんですか、近鉄のカゴと?」


次の瞬間、私はあらためて、Yさんに畏怖を覚えざるを得なかったのです。

私という存在を遥かに凌駕するその大きさに。



「そんなん、先生。スーパーより百貨店のほうが、何でも値打ちがあるじゃないですか。」

「・・・。」



買い物カゴ。

ただの買い物カゴですよ。


しかし、そこにも、厳然たる階層社会が存在するとおっしゃるのです。

まるで、カースト制度のように、買い物カゴの社会にも格差が生じていると。


もしかして、これは、ブランド意識なのか?

まるで、ヴィトンやエルメスのバッグのように。


そう、ブランドとは、認知されることにより、確立される概念。

つまり、百貨店の買い物カゴは、スーパーの買い物カゴより、価値が高いのだ。


例えば、大阪には、半ば名物となっている電飾系の黄色いスーパーTがあります。

他府県から来られた方は、決まって、こう言われます。


「あら、このお店、スーパーだったの?パチンコ屋だと思ったわ。」


いかにも、大阪らしいと言えば、大阪らしい。

しかし、Yさんの評価は、すこぶる低いのです。


「だって、品がないでしょ。」


・・・品。

果たして、スーパーに品が必要なのかどうかは、定かではありません。


しかし、Yさんににらまれるということ。

それは、その口コミの伝播力を考慮すると、侮りがたいものがあるはず。

スーパーTの今後の企業努力に期待して止みません。



ところで、この「無断で借りてきた」買い物カゴを持っておられる方。

きっとYさん以外にも、たくさんいらっしゃるはず。


そう言えば、過去の伝説でLessIsMoreさんもコメントで告白されていました。

お母様が、その一人でいらっしゃると。

その方たちの間でも、「無断で借りてきた」買い物カゴに、厳然たる格付けがなされているのだろうか?


「あら、あの人。高島屋の買い物カゴだわ。」

「スーパーのカゴと違って、やっぱり品があるわよね。」

「私も、そろそろ借りに行こうかしら。」


なんて、会話がなされているのかもしれません。


ただ、この世界の住人には、誰でもなれるわけではありません。

残念ながら、小心者の私に、その資格はないのです。


頭の中で、再現してみました。

買い物カゴを無断で借りて、店舗から足を踏み出す瞬間。

いつ、店員さんから声をかけられるのではないだろうかと。

きっとドキドキしてしまうに違いないからです(笑)


しかし、Yさんに、そんな臆病さは、一切、見出すことはできません。

そもそも、何も言えないオーラがにじみ出ています。


万が一、その神聖な行為を咎める店員さんがいたとしても。

逆に、説教されるのがオチでしょう(笑)


そう、長年の歳月を経て、酸いも甘いも味わい尽くされた経験豊富な女性。

そうして、人生を達観され、ある一定の境地にたどり着かなければできない神聖な行為。

それこそが、買い物カゴの無断拝借。

まさに、一種の「悟り」ではないでしょうか。


特に、大阪という土地柄。

きっと日本一でしょうね。

ひったくりの発生件数と同じく、買い物カゴを無断で借りてきた件数も。



「なるほど、確かにスーパーRのかごは、たくさんありますね。」

「ええ、だって、スーパーは、しょっちゅう行くでしょ。」


なるほど、百貨店とは、訪問頻度が違いますものね。

それが、余計に、百貨店の買い物カゴの希少価値を高めているのかもしれません。

見上げると、スーパーRの買い物カゴは、5個くらい重ねられているでしょうか。


でも、待てよ。

Yさんは、買い物に行かれると、原則、無断で借りて来られる人だ。

しょっちゅう行かれるはずの近所のスーパーR。

それにしては、5個という数は、少な過ぎはしないだろうか?


「あのー、Yさん。」

「はい?」

「そのスーパーRのカゴなんですけど。」

「はい。」

「すぐに溜まりませんか?」

「ええ、溜まりますよ。」

「どうされているんですか?」

「実はね、これ・・・。」


Yさんの口から紡ぎ出されたその言葉。

明晩。

あなたは、またしても、禁断の扉に手をかけることになるだろう。

果たして、その扉の向こうに広がる世界とは・・・。



-つづく-


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コメント

先生…うちはスーパーかごですから、「品格」は下がるでしょうか(笑)
今度、伊勢丹とかのカゴを「借りて」母にプレゼントするとか←勇気がないっ!
ちなみに…うちの母は店員さんの前で堂々と「借りる」らしいです。
「あら、お兄ちゃん(お姉ちゃん)、ちょっとカゴ
あとで返すからね」
と、ドカンと自転車のうしろのカゴにくくりつけてニコニコ帰ってきます。
実家はこうして3色に彩られたカゴが積んでありますので
次回訪ねた際には色ごとにまとめて、クラス感のある配列にしてきてあげようと思います。
親孝行…? ブフフっ。

LessIsMore 2009年12月06日 10:00

LessIsMoreさん、こんばんは。

そうそう、その世界の住人の方にとって、伊勢丹のカゴは、ステイタスが高いと思いますよ(笑)

もし、LessIsMoreさんが、いつかYさんに会いたいとおっしゃれるなら。
その時は、是非、Yさんに東日本の百貨店の「ご当地カゴ」をプレゼントしてあげてください。
きっと動けなくなるまで、満腹にして頂けることと存じます(笑)

それにしても、LessIsMoreさんのお母様は、「無断」ではないのですね。
これは、この世界の住人でも、上流階級に属されますね。
きっとYさんもそうなんだと思います。

お母様もYさんも、きっと店員さんからマークされていることでしょう(笑)
もちろん、カゴを返してもらえるなんて、期待してないでしょうしね。

いつか、お母様とYさんの対談を実現したいものです。
気が合うこと、間違いなしかと。

是非、お母様に「黒魔術教団東京支部長」として、地域住民への啓蒙活動に努めて頂ければ幸いです。

ところで、もし、お母様もご近所の奥さんに溜まったカゴを返しに行かせられるようになられたら・・・。

すみやかに、自ら教団を設立して頂ければと存じます。
まだ、大丈夫ですか?

いつもありがとうございます。

manablog 2009年12月07日 00:11

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