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ただし、なかなか真似できませんけど。
しょっちゅう行かれるスーパーRの買い物カゴ。
その度に、無断で借りて来られるYさん。
きっとひと月もしないうちに、クーラーケースの上に乗りきらなくなることだろう。
果たして、その行方とは?
私は、この言葉を聴いた時。
素直に尊敬してしまいました。
「この人、すごいな」って。
いや、Yさんがすごいのは、以前から、重々、承知していますよ。
何と言っても、「伝説の人」ですから。
しかし、これは、できないわ。
我々、凡人には。
はい、みなさん、ご準備はよろしいですか?
無断で借りてきたスーパーRの買い物カゴ。
溜まってあふれる前に、Yさんが手を打たれていた対策とは・・・
「となりの奥さんに返しに行ってもらっているんです。」
大丈夫ですか?
私は、しばらくフリーズしてしまいましたけどね(笑)
「えっ・・・となりの奥さん・・・ですか?」
「ええ、おとなりのUさんところの奥さん。」
「スーパーRに返しに行ってくれるんですか?」
「そうなんです。ほんと助かるんです。」
「・・・そりゃ、助かりますね。」
すごい。
すご過ぎる。
ご自分がスーパーRから無断で借りてきた買い物カゴ。
それを数が増えて、邪魔になったからといって。
よもや他人に返しに行かせるというのだ。
しかも、同じ地域社会の一員として共生すべき、おとなりの奥さんにだ。
これは、なかなかできることではありません。
「私は、火曜日にしか行かないんです。」
「えっ、スーパーRにですか?」
「そう、卵の特売日だけね。」
「そうなんですか?」
「他の日は、チラシを見て決めてるんです。」
「なるほど。」
「まあ、大体は、U本町Hタウンが多いんですけどね。」
「ああ、Hタウンですか。」
地元では、有名な専門店街です。
「でも、おとなりの奥さんはね。」
「はい。」
「スーパーRしか行かないの。」
「はあ、そうなんですか。」
「そう。だから、Rのカゴが溜まるとね、返しに行ってもらうんです。」
何ということだ。
おとなりの奥さんの行動特性をしっかり見極められた上での作戦立案なのだ。
しかも、結果的にカゴを店に返しているではありませんか。
「ちゃんとリサイクルしてるんですよ。」
「はあ、確かにそうですね。」
「それに、ビニル袋も使わないでしょ。」
「カゴですものね。(お店のだけど)」
「だから、今、流行りのエコなんです。」
「・・・エコ・リサイクル」
「そう、そのエコ・リサイクル。」
・・・エ、エコ。
果たして、これを「エコ」と定義してもよいのだろうか?
何の罪もないおとなりの奥さんに、ご自分の尻ぬぐいをさせるYさん。
エコというより「エゴ」に思えるのは、私だけだろうか?
いやあ、今回もやられましたね。
カゴだけで3話も引っ張ってしまい、良心の呵責に苛まれる私。
しかし、魔力に魅入られたそのペン先にほとばしる衝動。
抗うことは、できなかったのです。
いつもどおり、お腹いっぱいの帰り際。
「そうそう、先生。今日は、お土産に鉄火巻きを用意していますからね。」
「えっ、ちゃんと好物を覚えていて頂いてるんですね?」
「そんなの、当然じゃないですか。」
ありがたく頂いたデパ地下で購入された鉄火巻きのパック。
しかし、Y家の敷居をまたぐ者に課せられた「鉄の掟」を忘れてはいけません。
いつもながらの習慣で、さり気なく見た賞味期限。
「12月3日AMまでおいしく召し上がれます。」
・・・今日の午前中に切れてるじゃないか。
「先生、早めに召し上がってくださいね。」
優しさに満ちあふれた、そのお言葉。
通常、この言葉は、賞味期限が切れる前にかけられます。
しかし、Yさんは違います。
切れたものこそ、大事にしなければならないのです。
「これも、エコなのかなあ。」
雨上がりの夜空を見上げ、誰にともなくつぶやく私。
今宵もひと仕事終えた充足感に満たされます。
例え、満月から答えは返らなくとも・・・。
-完-
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