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果たして、ほんとにそうですか?
Iさんは、50代の男性。
大手企業の管理職です。
先日、昼すぎに職場からお電話を頂きました。
「今から早退しますので、予約をお願いします。」
Iさんも、当院の常連さんです。
以前は、何か症状がある時に来院されてました。
しかし、ここ半年は、少し疲れがたまられると、来て頂けるようになりました。
「転ばぬ先の杖ですね。痛い思いはしたくないですから。」
さらに、ご自宅で、養生のために、棒灸もされています。
ほんと、うまく活用して頂いてます。
そのIさんが、お仕事を早退してまで、急遽、来られるとは。
夕方、来院されました。
もう入ってくる時から、足をひきずっていらっしゃいます。
「どうされたんですか?」
「いや、腰が痛くて、歩けなくなってしまいまして・・・。」
「ほお、いつからですか?」
「昨晩から、少し違和感があったんです。」
「はい」
「で、今朝、起きたら、もう激痛で。」
「そうですか。でも、出勤されたんですね。」
「ええ、午前中はどうしても外せない商用がありまして。」
で、商用が終わり次第、タクシーで帰宅されたそうです。
「では、ちょっと拝見させてもらいますね。」
脈診、腹診の結果、胃がヘロヘロに弱っています。
腰が痛いとおっしゃってますが、腰でもやや上の方。
そこは、ちょうど胃の裏側です。
特に、忘年会シーズンの今頃は、多いんですよね。
腰でもやや上の方が痛い場合。
さらに、背中を後ろに反らすのがつらい場合。
ほとんどの場合、胃経が原因です。
だから、腰に湿布を貼っても治りません。
試しに、過去記事でもご紹介しました胃経の「陥谷(かんこく)」。
押してみると、飛び上がらんばかりに痛がります。
「最近、飲まれましたか?」
「ええ、痛くなる前日に。」
「忘年会ですよね。」
「そうなんです。立場上、どうしても出席しないといけませんし・・・。」
「そりゃ、そうですよねえ。」
「で、飲んだ帰りに、腰に違和感が出始めたんです。」
「結構、飲まれたんですか?」
「焼酎の水割りを5~6杯に、ビール1~2本ってところでしょうか。」
「ご自分としては、多いほうですか?」
「いや、これぐらいなら、これまでは平気でした。」
「ほお」
「しかし、先生に言われてから、プライベートでは、ほとんど飲みに行かなくなりました。」
「へえー、そうでしたか。」
「だから、ほんとに久しぶりだったんですね。」
「なるほど。」
多分、焼酎の水割りが効いたんでしょうね。
氷を入れて、キンキンに冷えたヤツをクイッといっちゃたようです。
冷えたモノを飲むとね。
胃は、燃えるんです。
もちろん、アイスクリームなんかを食べても同じ。
逆に、燃えてしまうんですね。
胃は、冷えてしまったら、「消化」という大事な仕事ができないわけです。
だから、血液を胃に思いっきり集めて、温度を上げようとします。
サーモグラフィーで視たら、胃が真っ赤で、手先、足先が青色でしょうね。
末端冷え症の原因でもあります。
当然、胃は、オーバーワークで疲れてしまいます。
Iさんは、普段、胃が働き過ぎでした。
脈を診ても、いつも胃が荒れているんですね。
しかし、その日は、ヘロヘロ。
もう荒れる元気もないってかんじ。
とにかく、脾経、胃経の調整にかかりました。
ツボもかなり響きます。
おまけに、腎経も弱ってました。
腎経が弱ると、前屈がつらくなります。
Iさんは、見事なものでした。
磁気テープを腎経、膀胱経のツボに貼ると、前屈が楽になります。
逆に、脾経、胃経にのツボに貼ると、後屈が楽になります。
是非、鍼灸専門学校のモデルになってほしいところです(笑)
施術を終え、少しは楽になって頂けました。
しかし、スタスタと歩くには、ほど遠い状況。
でも、脈が良くなりましたからね。
胃の脈に力強さが出てきました。
この脈の様子なら、おとなしくカラダに任せておけば、回復も早いでしょう。
しかし、企業戦士は、そうも行きません。
「何とか歩けるようにしてもらいましたから、明日は、出勤できますね。」
「やっぱり出勤されるんですよねえ。」
「すいません。もちろん、静養しておくのが一番ってことは分かるんですが。」
「はあ、私もサラリーマンでしたから、よく分かります。」
「実は、部下で異動する者が一人、いましてね。」
「ほお、変わった時期ですね。」
「ええ、家庭の事情がちょっとからんでまして。」
「なるほど。」
「で、明日は、彼への異動発令なんですよ。」
「そりゃ、休めないですね。」
「ええ、そうなんですよ。」
直属の上司としては、仕方ありませんね。
「けど、その日は、送別会とか用意されてるんじゃないですか?」
「実は、そうなんです。」
「じゃあ、また、飲むんですね?」
「いやあ、控えめにしようとは思うんですが・・・。」
「注がれたらねえ。」
「ええ、さすがにね。」
「ほんとお察しします。」
そうして、Iさんは、帰宅されました。
足をひきずりながらも、来院当初よりは、マシになってました。
で、翌々日。
早朝から電話が鳴ります。
Iさんです。
「どうされましたか?」
「いやあ、申し訳ないんですが。」
「やっぱり飲まれたんですね?」
「ええ。で、今朝、起きたら、症状が逆戻りに・・・。」
その日も、忘年会があったようですが、さすがに欠勤されました。
来客があったようですが、先方にもお詫びの電話を入れ、部下に代わってもらったようです。
「やっぱりでしたね。」
「ええ、分かってたんですけど。」
「でも、今日は、来客があったのに、よく休まれましたね。」
「いや、足を引きずって、痛そうな顔をしていては、相手に失礼ですしね。」
「そりゃ、そうですよね。」
その日も、施術後、そこそこは回復されました。
けど、後は、カラダの治る力に任せて、静養するしかありません。
「けど、まだ、年内に忘年会が3回もあるんです。」
「えっ、まだ、そんなに!?」
「立場上、顔だけでも出さないとって思うんですが。」
顔だけ出して、素直に帰られるとは思えませんが(笑)
そんなことをしたら、症状が悪化するのは、目に見えています。
「う~ん、これは、Iさん。『お試し』かもしれませんね。」
「はあ?『お試し』ですか?」
「ええ、『手放す』ことのね。」
「なるほど、『手放す』ですか。」
そうおっしゃって、しばらく感慨深く考え込んでいらっしゃいました。
さすが大手企業の管理職になられている方。
外見も、物腰も、紳士的ですしね。
当然、人間的な深みも、私より遥かにお持ちです。
ご自分なりに感じられるところがおありなんですね。
「まあ・・・私の課題ですね(笑)」
そう苦笑されながら、その日は、ご帰宅されました。
3日後。
Iさんから、お電話を頂きました。
「おかげさまで、普通に歩けるようになりました。」
「えっ、ほんとですか?」
「ええ、多少、違和感は残るものの、痛みはもうありません。」
「そうですか。それは何よりですね。」
「ええ、今回は、勉強になりました。」
「と、おっしゃいますと?」
Iさんの声も軽やかです。
「『お試し』ですよ、『お試し』。」
「ああ、そんなこと、申し上げましたね(笑)」
「実は、あれから、ずっと会社を休んでいるんですよ。」
「ええっ!ほんとですか?」
これは、驚きましたね。
企業戦士の代名詞のようなIさん。
年末の忙しい時に3日も連続で。
「これがね、先生。」
「はい。」
「何とかなるもんですね。」
「何とかなりましたか(笑)」
「ええ、部下には、多少、うらまれているかもしれませんが(笑)」
「いいんじゃないですか。部下にうらまれるくらいなら(笑)」
「そうなんですよ。それが、仕事ですから(笑)」
そういえば、Iさんの声は、軽いだけでなく、柔らかいですね。
「だいぶ肩の力が抜けられたようですね。」
「はあ、少しは手放せたのかもしれませんね。」
「ほお、それはすごい気づきですね。」
「ええ、自分が『絶対』だと思っていたことが、そうでもないんだなと。」
「うわー、それは、ほんとに大きな転機ですね。」
「先日の異動発令でも、私の上司に頼むこともできましたしね。」
「なるほど。」
「後で、本人にフォローしておけば、理解してくれたでしょうし。」
「確かに、そうでしょうね。」
「ええ、結局は、自分で足かせをつくっていたことが分かりました。」
「ご自分で?」
「ええ、会社や常識のせいにしてましたけど。」
「ほお。」
「結局は、自分自身の思い込みや見栄だったんですね。」
「それは、非常に意義深い3日間でしたね。」
「そう考えると、『絶対』っていうものが、ほとんどないことに気づきました。」
「みなさん、それに苦しまれて、ストレスでカラダを壊されますからね。」
「はい。だから、今回は、ほんといい勉強になりました。」
これは、深いですね。
『絶対』っていうものが、ほとんどない。
『絶対』にしているのは、自分自身の思い込みであると。
かく言う私も、いまだに「~ねばならない」にとらわれることがあります。
何と言っても長いですからね、私も(笑)
やはり簡単には、抜けてくれませんね。
今回は、Iさん、ご自身が気づきを得られました。
と、同時に。
そんな私自身への学びであったように思います。
いやあ、このお仕事、いいですよ(笑)
おまけに、天真爛漫な教祖さまが、毎週、レクチャーしてくれますからね(笑)
ほんとに「学ぶ」ために、この世に生を受けた学くんでした。
いつもありがとうございます。
では、今宵はこのあたりで。
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