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2010年01月11日 00:10

ロード・オブ・ザ・リング

闇の冥王は、今年も大ブレイクの予感。


行ってまいりました。

Yさん宅です。

「Yさん」でピンと来られない方は、こちらをどうぞ。

(Yさん伝説:101112131415161718192021222324252627282930313233343536373839404142434445,46,47,48,4950


2010年、初春。

1月7日、木曜日。

今年の私の運命を占う初めての黒ミサ。

さて、今宵の教祖様のご機嫌はいかに・・・。



その日はね。

遅かったんです。

法人契約してもらっている企業さんへの出張施術。

そこを出たのが、22時。

Yさん宅まで30分。


「今から伺いますので。」


事前に電話を入れておきます。

そう、必ずシャワーを浴びられますからね。


「はい、お待ちしています。」


おっと大事なことを言い忘れるところでした。


「あのー、今日は、夕食は頂きましたので、お気遣いなく。」


さすがに、この時間帯に胃腸の限界まで挑戦する気にはなれません。

もちろん、前日、確認の電話を入れた時にも、念押ししてますよ。

明日は、結構ですからって。


22時30分。

混沌の世界へ到着。


「こんばんは~、谷田です。」

「あら、先生、いらっしゃい。」

「本年もよろしくお願いします。」

「こちらこそ。」


挨拶もそこそこ。

頭を上げた私の視界の片隅。

食卓に見過ごせない危機を察知してしまいました。


「先生、今日は、もう夕食は召し上がられたんですね。」

「ええ、しっかり頂いてきましたので。」

「でも、こんな時間まで働いてはって、お疲れでしょう。」

「いえ、全然、大丈夫ですよ。」

「夕方、召し上がってたら、ちょうどお腹がすいてこられるだろうと思って。」

「・・・ご用意頂いてるんですか?」

「はい、お夜食にと思って。」


「や・し・ょ・く」


やられました。

そう、来ましたか。


夕食を食べても、夜にちょっと小腹が空いたとき。

ちょこっとつまむのが、夜食。

夜食なら、すでに夕食を摂ったことが免責事項にはなりません。


う~む、こんな高度な策略が用意されているとは。

まるで、法の抜け穴を駆使する悪徳弁護士ではないか。


「今日は、七草がゆですね。」

「そうでしたね。」


助かった。

まだ、おかゆなら。


「でも、今日はこれを召し上がってください。」


こ、これは・・・。


「イカ・・・イカリングですか?」

「そう、イカを揚げてみました。」


なぜ、イカなんだ。

七草がゆじゃなかったのか。


「七草がゆにしようかと思ったんですけどね。」

「はあ」

「そんなんじゃカロリーが足りないだろうと思って。」

「はあ」

「イカは疲労回復にいいみたいなんですよ。」

「はあ」


っていうか、食べ疲れしそうなんですけど。


しかもね。

多いんです。

そう、イカが。


大ぶりの鉢にうず高くイカリングが積み上げられています。

どうみても、50個以上はあります。

この時間帯に、これはないでしょう。


確かに、私はイカが好きです。

イカフライ定食を頼むこともあるでしょう。

しかし、その定食でも、せいぜいイカリングが5個ではないでしょうか?


「さあさ、先生、召し上がってください。」

「あのー、夜食ですから、ご飯は結構ですので。」

「あら、そうですか?まあ、仕方はないわね。」


ご不満そうなYさん。

しかし、これは、私の胃腸の安全保障において、譲れない一線。


「・・・では、頂きます。」


ん?

おや?

噛み切れないぞ。


身がパサパサ。

しかも、固い。

イカの持ち味である弾力が全くありません。


「それね、失敗作なんです。」

「・・・はは、ちょっと固いですね。」

「実は、それ昨日揚げたんですけどね。」


えっ、昨日!?

昨日の揚げ物ですか?

どうりで、見た目からベトッとしているはずです。


「お正月におせちを作ったでしょ。」

「はあ。」

「その時に、冷蔵庫も大掃除したんです。」

「はあ。」

「そしたら、冷凍庫の奥からいっぱい出てきたんです。」

「何が?」

「イカが。」

「・・・。」


つまり、石油と同じく掘り当ててしまったということですね。


「すっかり買ったことも忘れててね。」

「はあ。」

「で、また、買い足すでしょ。」

「はあ。」

「そしたら、いつの間にかイカだらけになってたんです。」


先日、奈良の桜井茶臼山古墳から発掘された大量の銅鏡。

卑弥呼の時代に製作されたことが、地層から測定されました。


Yさん宅の冷蔵庫。

同じようにその収納位置から、年代が測定されそうな気が。

一体、どれくらいのヴィンテージものなんでしょう。


「で、昨日、ちょうどかき揚げを作ってたんですね。」

「はあ。」

「だから、この際、イカも全部揚げてしまおうって。」

「・・・そうなるんですね?」

「そうなるんです。」


なんということだ。

このイカは、伏魔殿の奥深くで悠久の眠りに就いていた幻の一品だったのか。


大丈夫なのだろうか?

いや、冷凍してたから、大丈夫なんだろう。

しかし、それにも限度があるのでは。

身がパサパサしているは、そのせいではないのか?


「でもね、味見をしてみたら、やっぱり固いんです。」

「はあ」

「やっぱり剣先よりもアオリが良かったんですけどね。」

「はあ」


固いのは、品種よりも鮮度の問題だと思うんですが。


「私とお母さんだけじゃあ、食べきれないでしょ?」

「はあ」

「でも、明日は、先生がいらっしゃるわと思って。」

「はあ」

「ちょうど良かったんです。」

「・・・。」


「ちょうど良かった」


これは、聞き捨てならないお言葉。

果たして、誰にとって、「ちょうど」なんでしょう?


「処分」


そんな言葉が頭をよぎります。

しかし、それでは、イカくんにあまりにも申し訳ありません。

ここは、ありがたく頂くとしましょう。


ふた口目。

まるで、UFOキャッチャーのようにぎこちない動きで箸を伸ばします。


固い。

やはり固い。


「先生、レモンをしっかり絞ってくださいね。」

「はい、どうも。」


まるで、レモンを絞ったら、イカがやわらかくなるかと言わんばかりだ。


しかし・・・。

かけても、固い。

やはり固い。


さらに、全く減った気配がありません。

まるで、解体工場に積み上げられた古タイヤのように。

泰然と私の目の前に立ちはだかるのです。


「ほらね、やっぱり失敗作でしょ。」

「・・・いえ、おいしいですよ。」

「そうぉ?」


失敗作と言いながら、他のおかずを勧められる素振りが全くありません。

もちろん、お鉢の位置も私の真正面。

正中線の延長上に陣取られています。

そう、これが、メインディッシュなのです。


「じゃあ、先生。甘酢をかけてみましょう。」


自家製甘酢は、Yさん秘伝の味。

冥界の饗宴には、欠かせない一品。


「じゃあ、これをドボドボドボッと・・・。」

「ああ、そんなに・・・。」


食べる私の意向など、微塵も気にされることはありません。

その効果音のとおり、豪快に振りかけられてしまいました。

まさに、甘酢の床下浸水。


「さあ、先生、どうぞ。」


スッキリした表情のYさん。

まるで、甘酢をふりかけた分だけ、ストレスが発散されたかのように。


「・・・では、頂きます。」


自らを叱咤激励して、箸を伸ばします。


「!!」


こ、これは。

甘酢の味しかしないじゃないか。


「どう、先生?」

「はあ・・・甘酢がよく効いてますね。」

「どれどれ」


Yさんも、おもむろにお箸を伸ばされます。

そして、口に入れられた瞬間。

ウッと顔をしかめられ、ひと言。


「かけ過ぎね。」


そう、かけ過ぎですよ。

明らかに。


「じゃあ、先生。これをかけてみましょう。」


甘酢の前科など全く気にされることもなく、新たな提案をされるYさん。

そう言って、手にとられた見覚えのある一品。


「『食べる唐辛子』ですね。」

「そう、何でもあうんです。」


って、よっちゃんが言ってたんですよね。


そう、伝説ファンなら、ご存知ですね。

福井のよっちゃんからの贈り物。

『食べる唐辛子』

過去の伝説でも登場しましたね。


「あっ、先生。これ、お土産に持って帰ってくださいね。」

「いえいえ、そんなせっかくの贈り物なのに。」

「大丈夫。よっちゃんに電話して、また、たくさん送ってもらったんです。」

「・・・そうですか。」


くっ、よっちゃんめ。

見事な連携プレーではないか。


「じゃあ、これもドバドバドバッと。」

「ああ、そんなに!」


なぜ、「サラッ」とではなく、「ドバドバ」なんでしょう?

イカリングの山に赤い絨毯が敷き詰められます。

まるで、紅葉に色づいた晩秋の伊吹山のように。


「さあ、先生、召し上がってください。」


好奇心旺盛な瞳が、私を捉えて離しません。


「・・・では、頂きます。」


「!!!」


こ、この味は。

全くあってない。

南蛮漬けのような味を予想してましたが。

甘酢と唐辛子がそれぞれに自己主張しています。

調和するどころか、しっかりケンカしています。

何とも形容の仕様のない不思議な味。


「あら、これでもダメね。」


ご自分でも口にされたYさん。

しばらくクチャクチャされていたものの。

やはり噛みきれなかったらしく、ペッと手のひらに吐き出されて、ゴミ箱へ。


と言っても、イカリングから解放してくれるわけではありません。

あくまで、メインディッシュなのです。


せめてね、ゲソでもあればね。

私は、ゲソが好きなんです。

少しは、食感のアクセントになったことでしょう。


しかし、見事に胴体だけ。

しかも、Yさんの見事な味付けで、より難易度を増しています。


12個。

それが、私の限界でした。

自分なりによくやったと褒めてあげたいと思います。


「さすがに、夕食をしっかり頂いたもので・・・。」

「あら、そうですか・・・じゃあ、これぐらいで。」


と言って、お鉢にラップをかけられます。


はっ!

ラップ?

まさか来週まで保存しておかれないよな。

冬の冷麺の記憶が、まざまざと脳裏に甦ります。


いくら何でも、揚げ物ですからね。

でも、絶対ないと言い切れないところが、Yさんが伝説の人たる所以なのです。

あのイカリングは、一体、どうなるのだろう?

自らの身に降りかかってくるだけに、重大な懸案事項です。


そうして、施術を無事終えました。


「あら、先生。遅くなってしまいましたね。」

「いえ、大丈夫ですよ。いつも夜更かししてますから。」


もう日付が変わってしまいました。

さあ、早く帰って、お風呂に入ろう。


「ああ、先生。お土産をご用意してるんです。」

「えっ、そんな。お気遣いなく。」

「いえいえ、もうちゃんと用意してあるんですから。」

「はあ、そうですか。いつもすいません。」


食卓には、ビニル袋と紙袋が二つ用意されています。


「高知からいろいろ送ってきたんです。」

「そうですか。」


思わず緊張で身を固くしてしまいます。


「まず、これが、うちのいとこが作っているカマボコでね。」


そう、Yさんのいとこは、高知でかまぼこ工場を経営されています。

こだわりの製法で、生産量は少ないんです。

でも、テレビや雑誌で取り上げられるほど、地元では老舗の有名店。


「はらたいらさんも、お得意さんなんですよ。」

「へえー、あのはらたいらさんが。」


ビミョーですね(笑)

しばらくこだわりの製法について、熱弁を奮われます。

深夜にもかかわらず、新春ドラマ『かまぼこ一代記』が幕を開けました。


「はあ」

「ほお」

「そうですか」


「で、これが、カマスの一夜干しでね。」


「はあ」

「ほお」

「そうですか」


「で、これが、サバのみりん干しでね。」


「はあ」

「ほお」

「そうですか」


実は、連続ドラマ『南国土佐をあとにして』だったんです。

次から次へと、高知名産の珍しい海産物のオンパレード。


「これは、お母さんに調理してもらうとき、必ずとろ火で、ゆっくり焼いてもらってくださいね。」

「はあ」


こうして、大阪の夜は、しんしんと更けていくのです。



帰ったら・・・2時でした。



-完-

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コメント

はじめまして。
いつも楽しく読ませていただいてます。
今日はもう我慢できません、初コメします。

先生、お疲れ様でした。
翌日起きた途端にゲップがでませんでしたか?
何日掛かれば完全消化できるのでしょうか?
とても心配です。

Yさん強烈すぎで大爆笑!!

mika 2010年01月11日 09:45

あけましておめでとうございます。
ということでお節ネタかと思ったのですが
あにはからんやこうきたか、ですね。
イカリングはビールとともに、あげたてをサクサクと!
そんな常識を軽く打ち破りますね。

新年早々ファンクラブ会長に「予約」をとっととするよう
強要いや強く勧められました。
てるきな先生他強力な布陣で遠くから応援するつもりやったんですが。
もう定員オーバになってることを祈ります。

Ree 2010年01月11日 13:58

こんばんは 

1月7日・・・
私が伝説ライブの会場の下見を終えて
名古屋に帰る頃・・・・
そんなことが起こっていたのですね 

キャハハハ♪(_≧∇≦)ノ彡☆バンバン 

さすが教祖様・・・。
今年も魔力は健在ですね 

さ~て 来週のまなブログは・・・(さざえさん風)
『まなぶ君 イカリングにうなされる。』 

・・・でしょうか? 
冷麺の再来がないことをお祈りしています。

追伸・・・Reeちゃんへ 
人聞きの悪い・・・強要なんて(笑) 
一緒に 感動をともにしようって言っただけよん♪ 

いちご@親衛隊長 2010年01月11日 22:48

mikaさん、はじめまして。
コメント、ありがとうございます。
いつもご覧頂いているようで、嬉しいかぎりです。

おっしゃるとおり、翌朝は、胃が重く、食欲がありませんでした。
しかし、金曜日の朝は、大体、こんなかんじです(笑)
毎週、試練に耐えてくれている胃腸に感謝です。

では、今後ともよろしくお願い致します。
頂いたご縁に感謝。

いつもありがとうございます。

manablog 2010年01月11日 23:55

Reeさん、こんばんは。
確かに、揚げたての新鮮なイカリングであれば、サクサクしておいしかったんでしょうね。
身がパサパサしていたのは、いくら冷凍とはいえ、熟成しすぎた結果ではないでしょうか。

親衛隊長からのありがたいお申し出。
しっかりReeさんの席を確保させて頂きますので、後ほど、必要条件を記載のうえ、メールください。
やはり体感しないと、糧にはなりませんよ(笑)

いつもありがとうございます。

manablog 2010年01月11日 23:58

いちごさん、こんばんは。
そうなんです。
そんなことが起こってたんです。
しばらくイカは結構です(笑)

Reeさんも、すでに魔界に足を踏み入れた巡礼者。
是非とも、教祖様のイニシエーションを受けて頂きましょう。
・・・合掌。

いつもありがとうございます。

manablog 2010年01月12日 00:00

こんばんは!!
50個のところで笑ってしまいました。
今度、一度、すべらない話で全国に披露して
ほしいわ~ん

やはりYさんには我々人間界の持つ「時間」と
いう概念がないんですね。

なんか3月、拝みに行きたくなってきたぁぁぁ

湯たんぽキティ 2010年01月12日 00:41

キティさん、こんばんは。

あまりのイカリングの多さ。
思わず息を呑んでしまいました。

そうそう、Yさんは、時間に対しては、大変寛容な方なのです。

体調が快復されれば、是非、お越しください。
お待ちしております。

いつもありがとうございます。

manablog 2010年01月13日 00:45

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