http://blog.actosmember.com/trackback.php?id=1694
※記事と直接関係のない内容のトラックバックはお断りする場合があります。ご了承ください。
名産品とともに送られてきたようです。
行ってまいりました。
Yさん宅です。
「Yさん」でピンと来られない方は、こちらをどうぞ。
(Yさん伝説:1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20,21,22,23,24,25,26,27,28,29,30,31,32,33,34,35,36,37,38,39,40,41,42,43,44,45,46,47,48,49,50,51)
名古屋での講座を3日後に控えた先週の木曜日。
イカリングを頂いた翌週の食卓。
今宵は、何としてでも、無事に乗りきらねばなるまい。
「先生、今日は、お鍋にしますから。」
ヨシ!
とりあえず、イカリングの再来は回避できたようだ。
ホッとひと息ついたのも、束の間。
「じゃあ、先生、そのお鍋を棚から下ろしてもらえますか?」
「はい、分かりました。」
キッチンの収納棚の上のほうに、土鍋が載せられていました。
しっかりとした厚手の土鍋。
さすがに、結構、重いなあ。
ん?
しかし、待てよ。
この土鍋。
どうみても、4~5人で食卓を囲むくらいの大きさだよな。
お母さんは、今宵は、すでにベッドでお休みなので、戦力外。
Yさんは、ダイエット中(自称:通年)だから、取り皿に2~3杯がいいところ。
となると、この大きな土鍋。
一体、誰が完食する責任を負わなければならないのだろう?
鍋で、身も心も温まるはずが、背筋にゾクッと寒気を感じる私。
とりあえず、コンロに土鍋をセットします。
「今日はね、いい鴨のお肉が手に入ったんです。」
「ほお、鴨鍋ですか?」
これは、おいしそうですねえ。
味噌をベースにした鍋に、ネギと一緒に頂きたいところです。
「じゃあ、先生。これから、用意しますから。」
「はい、何かお手伝いできることがあれば・・・。」
「いいの、いいの。お鍋が出来るまで、これを召し上がっておいてください。」
そういって、ネギトロ巻きのパックを冷蔵庫から取り出されます。
「いつもながら、私の好物を覚えていてくれているんですね。」
「当たり前じゃないですか。」
もちろん、私は、ネギトロ巻きが好きです。
しかし、ネギトロ巻き以外も好きです。
昨年あたり、たまたま頂いたネギトロ巻きの食べっぷりが良かったんでしょうね。
「先生、ネギトロ巻きが好物なの?」
「えっ?・・・ああ、はい、そうですね。好きですね。」
以降、Yさん宅の食卓では、お寿司といえば、「ネギトロ巻き」に定着してしまいました。
いまさら、どうこう言えず、「ネギトロ巻きに目がない」ということになっています(笑)
でもね、みなさん。
巻き寿司のパックって、結構、入ってますよね。
12個入りですよ。
これは、あくまで、私のためにご用意頂いた一品。
だから、私ひとりの責任において、自己完結しなければならないのです。
「いやあ、いつもながら、ネギトロ巻きはたまりませんねえ。」
「そうでしょ?近鉄百貨店の地下のお寿司は、結構、イケるのよ。」
確かに、おいしいんですよ。
最初の5~6個までは。
しかし、同じネタの巻き寿司を10個以上、続けて食べるとね。
さすがに、ペースダウンしてきます。
「あーっ、おいしかったです。ごちそうさまでした。」
何とかネギトロ巻きは、完食することができました。
しかし、すでに、もういいかなあってかんじの腹具合です。
「何を言ってるの、先生。これから、お鍋の本番ですよ。」
「はあ・・・すいません。」
そう、ネギトロ巻きは、あくまで「つなぎ」なのです。
先日から、一日一食を続けていたせいで、食が細くなったのかもしれません。
キッチンでは、Yさんが、具材を順番に鍋の中へ。
「ところで、Yさん。」
「はい?」
「やはり鴨というと、出汁はお味噌ですか?」
瞬間、Yさんの瞳がキラリと光ります。
まさに、よくぞ訊いてくれたと言わんばかりに。
「そう思うでしょ?」
「えっ、違うんですか?」
「実は、これなの・・・ジャジャーン!」
効果音付きで、紙袋から取り出されたのが、コレ。
橙(だいだい)です。
あの正月飾りに使われるミカンの仲間ですね。
「へえー、柚子の代わりに使われるんですか?」
「そうなの。これが柚子よりおいしいって。」
「おいしいって?」
「小豆島(しょうどしま)のやすこちゃんが送って来てくれたのよ。」
「はあ、やすこさんが。」
「小豆島のやすこちゃん」が、どこの、どなたか、もちろん知りません。
しかし、ここは、そのまま、サラッと流しておくべきところでしょう。
瀬戸内海に浮かぶ香川県の小豆島。
関西圏では、有名な観光地。
温暖な気候を活かし、オリーブやかんきつ類の栽培が盛んですね。
「そのやすこちゃんがね。」
「はあ」
「橙と一緒に手紙を入れてくれていてね。」
「ほお」
「柚子の代わりにお鍋に入れるといいよって。」
「そうですか」
なるほど、柚子の代わりですね。
橙を搾ったことはないですが、やはりさっぱりした味なんでしょうね。
鴨の脂には、ちょうどいいかもしれません。
「で、おうどんも入れましょうね。」
「はあ、それは、おいしそうですね。」
すると、きしめんかと思うような太めのうどんを二玉入れられました。
二玉は、多いんじゃないでしょうか。
もちろん、ネギや白菜だけでなく、お鍋定番の具材はしっかりと押えていらっしゃいます。
見た目からして、結構なボリュームです。
「さあ、そろそろ、橙を搾りましょうか。」
「えっ、まだ、お鍋は煮えてませんよ。」
「だから、今から入れておくんですよ。」
「えっ、どこに!?」
「お鍋の中に決まっているじゃないですか。」
ちょっと待ってください。
柚子の代わりに使うって言うから。
てっきり取り皿に入れるのかと。
みなさんも、そう思いませんでしたか?
しかし、Yさんは、橙を鍋に直接入れると言うのです。
現時点では、水炊き状態。
つまり、「橙鍋」になってしまいかねません。
果して、やすこさんは、ほんとにそんなことを手紙に書いてられたんでしょうか?
けれども、そんな私の心配など、Yさんが気にされるわけもありません。
「ほら、こんなに形が良くて、大きいの。」
確かに、ソフトボールくらいの大きさの立派な橙。
包丁で縦に半分に切られると、小鉢に果汁をギューッと搾られます。
「あら、やっぱりいい香りね。」
確かに、かんきつ系のほろ酸っぱい香りが食卓に漂います。
しかし、香りを楽しんでいる場合ではありません。
「まだ、もうちょっと要るわね。」
と、次の橙に包丁を入れられます。
これは、どうでしょう?
そんなの鍋にそのまま入れちゃったら。
どう考えても、酸っぱいような気がするんですが。
「あのー、Yさん。」
「はい?」
「ちなみに、やすこさんは、お鍋にどれくらいの分量を入れたらいいとか・・・。」
「そんなの、てきとーよ。」
「・・・。」
危険だ。
これは、危険だ。
「まあ、こんなもんかしらね。」
結構な量の果汁です。
「で、これをお鍋にホイッと。」
もちろん、全部入れられました。
「さあ、後は、煮えるのを待つだけね。」
ここで、ひとつ、気付いたことがあります。
これまでも、Yさんの調理スタイルを見続けて来た私。
普段と違う点が気になります。
味見をされないんです。
ええ、出汁の。
お料理にはうるさいYさん。
調理中には、必ず味見をされるんです。
でも、今日に限って、されません。
う~む、これは、一層、危険度が増すではないか。
「あのー、Yさん。」
「はい?」
「ところで、この橙を使ったお鍋なんですけどね。」
「はい」
「もう何度か召し上がられたんですか?」
「いーえー。」
・・・やはり。
「だって、お母さんと二人だから、なかなかお鍋はねえ。」
いわゆる「初物」ですね。
「今日、先生が来られるから、作るのを楽しみにしていたんですよ。」
「・・・はあ、それは、ありがとうございます。」
「どんなお味になるんでしょうね。」
どんなお味・・・。
見た目からして、ある程度の方向性が予想されるんですが。
すでに、口の中で、酸っぱいツバがたまっています。
「お呼ばれ」になりながら、こんなこと、言うのもなんですけどね。
できたら、木曜日に照準を合して「チャレンジ」されるのは、控えてほしいんですけど・・・。
そうこうするうちに、鍋がグツグツと煮立ってきました。
「さあ、そろそろかしらね。」
そう、そろそろですね。
まるで、注射の順番が回ってきた小学生のような心境。
「じゃあ、しっかり召し上がってくださいね。」
そう言って、Yさんは、お玉で具を取り皿に・・・って。
それ、どんぶりじゃないですか。
そのどんぶりに、これでもかと、具をてんこ盛り。
で、ご自分の前に置かれているのは、普通の取り皿。
「どんぶり・・・ですね。」
「だって、何回もよそるの、大変でしょ。」
「はあ・・・なるほど。」
その器の大きさが、珍味「橙鍋」完食に対する責任の大きさに比例しているようです。
「さあ、先生。召し上がってください。」
まるで、年末ジャンボの当選番号を確認するかのごとく。
好奇心に満ちた瞳が、私に突き刺さります。
「・・・では、頂きます。」
この状況に置かれて、他に選択肢はありません。
覚悟を決めて、どんぶりを口に近づけた刹那。
ウッ!
橙の酸っぱさが、ツンと鼻につきます。
いきなり出汁をすする勇気は、ありません。
それは、真冬の屋外プールに準備体操もせずに飛び込むようなもの。
とりあえず、白菜で様子を見ることに。
ムッ!!
酸っぱ~~いっ!
予想を裏切らないこの酸っぱさ。
とても鍋を頂いているとは思えないこの味覚。
思わず口を尖らせて、鼻で大きく息を吸い込んでしまいました。
「どう、先生?」
どう?って・・・見たら分かるでしょ、このリアクション。
しかし、そこは、小心者の私。
小沢幹事長に対する鳩山総理のように婉曲な表現で、お茶を濁します。
「はあ、橙がほんとによく効いてますね。」
最近、智恵を身につけましてね。
「~過ぎる」という場合。
「~がよく効いてますね」と表現するようになりました。
次の瞬間。
Yさんから、衝撃的なひと言が。
「やっぱり酸っぱかったですか?」
「やっぱり」ってなんですか、「やっぱり」って?
明らかな確信犯じゃないですか。
しかも、ご自分は、味見もされてないじゃないですか。
とうとう、私も、細やかな反抗を試みることにしました。
Yさんの取り皿を手にすると、お鍋から出汁だけをお玉ですくいます。
「はい、Yさん、どうぞ。」
まさか、私がそういう行動に出るとは思ってなかったんでしょうね。
「えっ、私!?」
そうやって、驚かれながらも、恐る恐る出汁をすすられます。
「ペッ、ペッ。酸っぱあ~っ!!」
と言って、顔をしかめて、舌を出されてます。
私は、噴き出しそうになるのをこらえながら、腹筋を震わせます。
しかし、私は忘れていたのです。
魔界では、Yさんが「絶対君主」であることを。
「じゃあ、お醤油を入れましょうね。」
なるほど、是非、そうしてください。
そう思った瞬間。
お醤油のビンは、鍋ではなく、私のどんぶりに向かってくるではありませんか。
「じゃあ、ザバザバザバーッと。」
効果音どおりに、たっぷりと、どんぶり上空で醤油のビンを旋回させます。
「ああ、Yさん、自分でかけますから!」
言わずもがな、出汁は、真っ黒です。
そのままでは、とても飲む勇気が湧いてきません。
お鍋の出汁で薄めて味を調整します。
しかし、橙の酸っぱさと醤油の辛さがあまりなじみません。
どちらも舌に残ります。
けれども、そんなことを気にしていては、前に進みません。
心を無にして、ひたすらどんぶりに箸を運びます。
そうやって、どんぶり2杯を平らげた頃。
「はい、先生。これで、お終いですから。」
Yさんから手渡されたどんぶりの中身。
鴨・・・鴨ばかりじゃないか。
そう、どうやら、鍋の底に鴨の肉が固まっていたようです。
確かに、鴨はおいしい。
でも、5切れまでですね。
その前に、ネギトロ巻きを12個食べ、どんぶり2杯の橙鍋を頂いてます。
そこへ鴨肉の連チャン。
独特の脂身がしっかりと堪えてきます。
6切れを超えたあたりから、胸が悪くなってきました。
「ご、ごちそうさまです。」
食べたあ。
ついに、食べ終えた。
きれいに空になった鍋の底を見つめながら、感慨にひたる私。
きっと世界五大陸最高峰の単独登頂を果した植村直己さんも、こんな心境だったでしょう。
椅子の背もたれに体重を預け、お腹をさする私。
しかし、一度でも反抗的な態度を示した者に対して、Yさんは容赦がありません。
次の瞬間。
耳を疑う言葉が発せられたのです。
「じゃあ、今からお魚を焼きましょうね。」
はぁ!?
お魚?
今から?
もう無理。
絶対、無理。
「いえいえ、Yさん。もうほんとに今日はこれで十分ですから。」
「そうぉ?」
「もうお腹いっぱい頂きましたので。」
「あら。でも、ご飯、三合も炊いたのに。」
「・・・。」
なぜ、鍋をするのに、ご飯を三合も炊くんですか?
って、まだ、これから、私にご飯を食べさせる気ですか?
ネギトロ巻きを食べたじゃないですか。
はっ!
そうだった。
Yさんと食卓を囲む際に気をつけなければならないこと。
それは・・・
「お茶碗に盛られた白いご飯以外は、主食と認められない。」
という鉄の掟が定められているのです。
この場合、お寿司は、お米の「加工品」と判断されます。
つまり、主食ではありません。
「副食=おかず」なのです。
これは、恐ろしい。
以前もありましたね。
焼き飯を食べても、イカめしを食べても、果てはオニギリまでも。
「みんな、『米』じゃないか!」
って、叫びたくなりますが、主食と認定されることはありません。
Yさんが丹精を込めて作られたお料理は、白いご飯と食べてこそ。
だから、それだけで味がついて、完結しているもの。
それは、「米」であっても、「ご飯」ではないのです。
このように、ISO14001より厳しい基準が設けられているのです。
特に、3月の伝説ライヴに参加されるみなさんは、ゆめゆめ忘れることなかれ。
早めに「本州のお米好き」である照喜名先生にロングパスを出して対処してください。
「じゃあ、先生。雑炊にしますか?」
その橙汁で雑炊ですか?
それだけは、勘弁して頂けないでしょうか。
上からも、下からも、酸っぱいものが、私の食道でクロスしそうです。
「いえ、ほんとうに今日は、これで結構ですので。」
「あら、そうぉ?」
ご不満そうなYさん。
しかし、この状態で「橙汁雑炊」を口にしたら。
間違いなく、マーライオンに変身してしまいそうです。
そんな私に、慈悲深いひと言が。
「じゃあ、橙は、また、残しておきましょうね。」
しまった!
橙がまだ、たっぷりと残っているではないか。
橙なんて、普段の調理で滅多に使わないんじゃないのか。
もしや、春までに、またもや、橙鍋が・・・。
小豆島のやすこさん。
きっとご厚意で贈られたんですよね、橙。
そのお心遣い、とても素晴らしいと思います。
しかし、橙には、鍋よりも、しめ縄がよく似合う気がします。
以後、物資を輸送する際には、必ず「私」という税関を経由願います。
名古屋の講座でご縁を頂いたみなさん。
私は、このような試練を経て、あの日を迎えられたのです。
だからこそ、無事、みなさんにお会いできた喜びも一入(ひとしお)だったのです。
今となっては、感謝しています。
Yさんのその心憎い演出に・・・。
-完-
コメント
コメントを書く